はじめに
脱炭素経営が企業に求められる中、「CO₂フリー電力」や「実質再エネ」を実現する手段として注目されているのが 非化石証書 と トラッキング付き再エネ です。
これらは似ているようで仕組みや利用目的が異なります。今回はその仕組みと、導入時に押さえておくべき選び方のポイントを解説します。
非化石証書とは？
非化石証書とは、再生可能エネルギーや原子力など、CO₂を排出しない電源で発電された「環境価値」を証書化したものです。
- 電気そのもの（物理的な電力）は火力発電等が混じった「系統電力」
- そこに「非化石証書」を組み合わせることで、利用者は「実質CO₂フリー」として扱える
- 企業は 排出係数0.000 として報告可能（Scope2：market-based方式）
特に、**非FIT非化石証書（トラッキング付き）**は発電所や電源の種類まで紐づけられるため、透明性が高いのが特徴です。
トラッキング付き再エネとは？
トラッキングとは、どの発電所で、いつ発電された電気かを証明する仕組みです。
これにより、単に「CO₂フリー」とするだけでなく、
- 発電所名（例：○○太陽光発電所）
- 発電期間
- 電源種別（太陽光・風力・水力など）
を明示でき、再エネ由来であることを裏付けることが可能になります。
この仕組みは、RE100やCDPなど国際的なイニシアチブに準拠した環境報告で求められることが多いため、グローバル企業を中心に重要度が高まっています。
非化石証書とトラッキング付き再エネの違い
| 項目 | 非化石証書 | トラッキング付き再エネ |
|---|---|---|
| 対象 | 非化石電源全般（再エネ＋原子力含む） | 再エネ電源に限定 |
| 証明できる内容 | 「CO₂排出ゼロ」の価値 | 発電所名・期間・電源種別まで追跡可能 |
| 報告適性 | CO₂排出削減（Scope2排出係数0.000） | ESG/RE100/CDP対応 |
| 価格帯 | 比較的安価 | 非化石証書より高め |
選び方のポイント
1. 目的に合わせる
- コスト削減＋脱炭素報告 → 非化石証書（CO₂フリー電力）
- ESG投資家・RE100対応・国際基準の報告 → トラッキング付き再エネ
2. 開示要件を確認
- 国内入札・自治体調達：CO₂フリー証明で十分な場合あり
- グローバル企業・輸出産業：再エネ由来（トラッキング）の明示が必須
3. コストと供給量のバランス
- 非化石証書は比較的安価で導入しやすい
- トラッキング付き再エネは供給量が限られ、価格が変動しやすい
まとめ
- 非化石証書は「CO₂フリー」を実現する最も手軽な手段
- トラッキング付き再エネは「再エネ由来」を証明する国際的に通用する仕組み
- どちらを選ぶかは、経営戦略・報告要件・コスト許容度に応じて決定することが重要です。
環境経営を進める上で、証書の仕組みを正しく理解し、目的に合った調達方法を選びましょう。